認知症と漢方薬

漢方の世界では、かなり早い時期から認知症の研究を行っていました。なぜ早くから研究されてきたのか。

それは今後の日本の将来にとって、大変重要な課題であるからです。

 

日本における認知症患者数は、2012年の時点で、約460万人。2025年には、700万人を超えると予測されています。

日本以外の先進国でも、認知症の患者数は激増しており問題となっていますが、ただ他の先進国と比較してみると日本の割合は非常に高いことがわかります。

 

アメリカは約500万人、ドイツ140万人〜150万人、フランス、イタリア、英国、カナダは、100万人以下。

アメリカの人口3億人に対し、日本は1億2000万人。

ですから、人口の割合から言えば、日本は他の先進国と比べて、なんと2、3倍となります。

 

高齢者の増加は他の先進国も同じような状況ですから、日本の割合が突出していることは高齢化だけが原因とも言い切れません。

また、90歳、100歳を超えて元気でしっかりしれいる人は日本にもたくさんいらっしゃいますから、一概に高齢になれば仕方のないと言える病気ではないと、私は思います。

 

認知症の原因には、諸説ございます。

害をもたらす因子の蓄積であったり、血流の低下または一部停止によって起こる、脳器質性障害によるものが大半を占めていると考えられています。

脳内における血流障害や、危険因子の蓄積、細胞の壊死などを防ぐ為には、常に質の良い血液が脳内隅々まで滞りなく循環することで、細胞に必要なものを送り届け、要らなくなったものを排出させ、脳の状態を健康に保つことが必要です。

そのことは認知症に限らず、脳梗塞や脳出血といった危険を防ぐことにもなります。

 

漢方薬は人の身体に起きた様々な乱れを整え、正しい健康な状態に戻していきます。

ですから、例えば脳内の血液の流れが良くない状態であれば、正常に流れるように働きかけます。

よって、ただ単に血液の流れを速めるのではなく、あくまでその人に合った正しい状態に調整していくのです。

 

このことから、漢方薬は認知症にも役立つと考えるのは、自然なことのように思います。

また、漢方薬を認知症に活用する一番のメリットは、「安全性が確立されている」ということです。

既に広く一般に使用され、安全性が十分に確認されている薬であるからこそ、薬害の危険が避けられるのです。

 

先日開催された漢方の研究会では、既に「抗認知症薬」の特許を取得している生薬類に関して継続して試験を行い、認知症への効果だけでなく、同じく脳の病気である「精神の病」に対する試験結果も報告されました。

今後引き続き漢方薬の研究や治験が進めば、近い将来、日本の認知症患者数、並びに精神疾患急増の歯止めに繋がっていくと、私は期待しています。

 

店頭でも認知症や精神疾患のご相談を、度々お受けするようになって参りました。

但し「認知症薬」と書かれた漢方薬はございません。

漢方薬はあくまで人間の身体を調整していくものですから、その調整の結果、脳の疾患を予防し改善することに繋がるのです。

 

認知症にも人によって様々な症状がございますので、まず今どのような状態であるかをお聴きし、その方の改善の助けとなる生薬をご提案させて頂きます。