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漢方薬全国大会にて〜認知症と漢方薬〜

4月16,17日の2日間、漢方薬メーカー主催の全国大会に出席して参りました。

 

この大会は毎年1回行われており、今回で55回目。私自身は2回目の参加となります。

今年行われた場所は、名古屋マリオットアソシアホテル。憧れのマリオットではありますが、残念ながら忙しすぎて、その雰囲気を十分に味わうことはできませんでした。

 

まず初日開始は昼1時半ですが、役員の打ち合わせの為、私は正午に現地入り。打ち合わせを終える頃には、北は北海道、南は九州から各地の先生方が続々とやって来られるので、東海地区の先生方と一緒に並んでお出迎え。

いざ会が始まると、東海の会長、そして社長のご挨拶と続き、その後また私の出番。前に立ち「神農本草経序録(しんのうほんぞうきょうじょろく)」という漢方を扱う者の心得」を唱和させて頂きました。

 

それから18時まで4時間の講演会。講演会の後には懇親会が用意されているので、その前に荷物だけを宿泊する部屋に置き、急いで懇親会の会場に。懇親会では、地元ホストとして催し物のお手伝い。

懇親会の後には「夜の部の勉強会」が用意されており、そこでも前で短い発表をさせて頂き、その会の終わりが22時。その後、また二次会へ。午前3時に倒れこむようにベッドに入り、翌朝9時から11時まで2時間のセミナーを受けて終了。結局、部屋での滞在時間は、就寝も含めて5時間でした。

 

そんなあっという間の2日間ですが、学べたことは大変大きいものだったと思います。とくにこの大会では、全国各地でご活躍されている先生方が一同に集まりますので、貴重なお話を聴けたり、教えを請うこともできます。

また、講演やセミナーも、一年の集大成といった内容で、非常に価値のある発表を聴く機会を頂きました。

その中でも特に印象に残った、「認知症と漢方薬」について、この場をお借りしてご紹介させて頂きます。

 

漢方界ではかなり早い時期から認知症の研究を行っていました。なぜ早くから研究されてきたのか。それは今後の日本の将来にとって、大変重要な課題であるからです。

 

日本における認知症患者数は、2012年の時点で、約460万人。2025年には、700万人を超えると予測されています。

日本以外の先進国でも、認知症の患者数は激増しており問題となっていますが、ただ他の先進国と比較してみると、日本の割合は非常に高いことがわかります。

 

アメリカは約500万人、ドイツ140万人〜150万人、フランス、イタリア、英国、カナダは、100万人以下。アメリカの人口3億人に対し、日本は1億2000万人。ですから、人口の割合から言えば、日本は他の先進国と比べて、なんと2、3倍となります。

高齢者の増加は他の先進国も同じような状況ですから、日本の割合が突出していることは高齢化だけが原因とも言い切れません。

また、90歳,100歳を超えて元気でしっかりしれいる人は、日本にたくさんいらっしゃいますから、一概に高齢になれば仕方のないと言える病気ではないと、私は思います。

 

認知症の原因には、諸説ございます。害をもたらす因子の蓄積であったり、血流の低下または一部停止によって起こる、脳器質性障害によるものが大半を占めていると考えられています。

脳内における血流障害や、危険因子の蓄積、細胞の壊死などを防ぐ為には、常に質の良い血液が、脳内隅々まで滞りなく循環することで、細胞に必要なものを送り届け、要らなくなったものを排出させ、脳の状態を健康に保つことが必要です。そのことは認知症に限らず、脳梗塞や脳出血といった危険を防ぐことにもなります。

 

漢方薬は、人の身体に起きた様々な乱れを整え、正しい健康な状態に戻していきます。ですから、例えば脳内の血液の流れが良くない状態であれば、正常に流れるように働きかけます。よって、ただ単に血液の流れを速めるのではなく、あくまでその人に合った正しい状態に調整していくのです。

このことから、漢方薬は認知症にも役立つと考えるのは、自然なことのように思います。また、漢方薬を認知症に活用する一番のメリットは、「安全性が確立されている」ということです。既に広く一般に使用され、安全性が十分に確認されている薬であるからこそ、薬害の危険が避けられるのです。

 

今回の発表では、既に「抗認知症薬」の特許を取得している生薬類に関して継続して試験を行い、認知症への効果だけでなく、同じく脳の病気である「精神の病」に対する試験結果も報告されました。今後引き続き、漢方薬の研究や治験が進めば、近い将来、日本の認知症患者数、並びに精神疾患急増の歯止めに繋がっていくと私は期待しています。

 

店頭でも認知症や精神疾患のご相談を度々お受けするようになって参りました。但し「認知症薬」と書かれた漢方薬はございません。漢方薬はあくまで人間の身体を調整していくものですから、その調整の結果、脳の疾患を予防し改善することに繋がるのです。

認知症にも人によって様々な症状がございますので、まず今どのような状態であるかをお聴きし、その方の改善の助けとなる生薬をご提案させて頂きます。