今や、4人に1人が花粉症。昔は目立たなかった「耳鼻科・皮膚科」が超満員。こんなにも花粉症やアレルギー、そしてアトピーが増えてしまったのはなぜでしょうか。これはもう個人の体質的問題ではなく、環境が作り出した「環境病」と言えます。
環境と言えば、日本にはスギの木が多いことも花粉症の大きな原因ですが、それだけですと年々アレルギーが増加する理由の説明にはなりません。
私が考える環境的主要因は、「抗生物質の使い過ぎ」「糖質の摂り過ぎ」の二つです。
(他にもいくつかの環境的要因はありますが、それはまた別の機会にご説明します)
まず「抗生物質」について。先日ついに、厚生労働省の有識者委員会が、「軽度の症状に抗生物質の投与を控えるよう呼びかける手引書」をまとめました。理由は、抗生物質を使いすぎると薬剤耐性菌が増え、近い将来治療に有効な抗生物質がなくなることを懸念した為です。
これまで、病院で風邪と診断されたら、必ずと言っていいほど抗生物質が処方されていた為、一般の方には「抗生物質こそ風邪の特効薬」と勘違いされるほどでした。近頃、それが誤った常識であることが、少しずつ一般の方にも知られるようになったと思います。
ただ問題なのは、耐性菌への懸念だけではありません。日本では何十年と抗生物質神話が続いた結果、日本人の免疫力には大きな悪影響が出てしまったと考えます。抗生物質は強力である為、いざ人が菌に負けてしまいそうなときは、とても役に立ちます。ですが、必要でない時に漫然と使ってしまうと、人が本来持っている免疫能力を低下させてしまいます。まるで、子供が解こうとしている問題を、親が先に全部解いてしまうようなもの。そのような行為は成長機会を妨げます。抗生物質により腸内環境を崩すことで、免疫力が失われていくのです。
次に「糖質の摂り過ぎ」について。現代人は、非常に糖質過多です。
現代人が糖質過剰になってしまった原因は、食べ物でも飲み物でもどこでもすぐに買えるようになったことがまず一つ。すぐに食べられる加工食品には、砂糖、果糖ぶどう糖液糖(異性化糖)、人工甘味料といったものが添加されています。食べ物・飲み物だけでなく、食卓に並ぶドレッシングや複合調味料にも。鍋の素も今や大変種類が豊富で、使う人が多くなってきたと思いますが、辛口スープの成分にもぶどう糖果糖液糖がしっかりと。
外に行けば、新しい可愛いお店は、美味しいパン屋やケーキ屋さん。オシャレなカフェの看板メニューは、パンケーキ。ランチにデザートをつけるのは当たり前。そのような環境で生きていく現代人が、糖類を減らすことはできても、断ち切ることはもはや不可能。
私自身も甘い物を断つことは不可能だと思っています。やっぱり、パンもケーキもアイスもフルーツも食べたいし、ランチセットにデザートがつかないのも寂しいです。
大切なことは、糖類過剰には害があることを知っておくことです。「前の日に、美味しいけれど悪い食べ物をたくさん食べれば、その翌日にアレルギーなどの症状がひどくなることがあっても仕方がない」という理解です。
甘いものを食べすぎれば、それだけ身体にダメージが残ります。ビタミンやカルシウムの欠乏が起こり、骨がもろくなります。血糖値の急な上昇は、血管を痛めますし、精神的な不安も。血液がドロドロになれば、免疫力の低下を招きます。コラーゲンを劣化させることによって皮膚や粘膜を弱くし、内臓の老化を早めます。ちなみに今、皮膚科や耳鼻科よりも急増している診療科は、「糖尿病専門内科」と「精神科・心療内科」です。
先述の通り、「糖質過剰は環境要因」なので、個人で「断つ」ことは非常に困難です。それに、美味しいものや便利なものを無理に我慢するのは、精神的にもよくありません。
ですから私達は、糖質過剰によって崩してしまった体のバランスを調整して治していくことを主眼としています。漢方薬には、身体の乱れを整え、身体本来の治癒力や免疫力を回復させる働きがあります。漢方薬は組み合わせによっては何百通りにもなりますので、きちんと皆様のお身体のことをお聴きした上で、選薬をさせて頂きます。